水明のお宝発掘シリーズ「水明会館図書紹介」その4
水明会館には貴重な法帖や珍しい教本が多くありますが、今月は少し変わった本を紹介しましょう。
今回紹介する本は『世話千字本教訓絵抄』です。
千字本といえば、皆さんもご存じのように「天地玄黄」で始まる漢文の長詩で、一千の異なった文字が使われていますが、そのうちの一字も重複していない名文です。
また、四字を一句とする250句の韻文で、韻を踏み格調もあります。
伝説ではこの千字文を作った周興嗣(しゅうこうし)は、この整然たる詩文を一晩で編み出したので、その労苦によって一夜にして白髪になったといわれています。
さて、今回紹介するのは
『世話千字本教訓絵抄』で、江戸時代寺子屋で使われたいわば、初等教育の教科書のようなものです。
周興嗣の千字本のように、格調はなく、押韻もしていませんが、挿絵もあり、なかなか面白い本です。
佐藤煒水
#世話千字文教訓絵抄
著者:[編著者]木村繁雄(編輯) [画者] 暁鐘成(画図
出版社:, 大坂 : 積玉圃梓/文繍堂蔵 文政9稔(1826年)とあります。
江戸時代の庶民にわかりやすいように総ルビ(全部に読みがな)付きで、
「亭主馳走」「邂逅饗応」「嘉肴潤沢」「料理塩梅」などの文字が並んでいますが、江戸時代の寺子屋でこれらを教科書に習っていたとしたら、当時の庶民の教育水準は相当に高いものだったかもしれません。