干支にまつわるエトセトラ《巳》
来年の干支は「巳(み)」である。
そこで、今年も「蛇」に関した故事や四字熟語を紹介したいと思う。
蛇は爬虫網有鱗目ヘビ亜目に分類される爬虫類の総称であり、トカゲとは類縁関係にあり有鱗目を構成している。
体が細長く四肢は退化しているのが特徴で、地上から地中、樹上、海洋に至るまで生活圏を広め、南極大陸を除く全大陸に分布している。また、毒蛇は熱帯・亜熱帯に多いと言われている。
蛇はその形態の異様さから、現代人にはあまり好まれないが、蛇が脱皮を繰り返し成長することから不死を連想させ神と扱われることもある。中国の神話に登場する人類創造の神である「伏義」「女媧」は人面蛇身と言われている。
以下の「伏義・女媧」を見ていただきたい。
「巳(み)」と紛らわしい文字に「己(おのれ)」「已(すでに)」があるが、この「巳」「己」「已」は昔から混同されやすく、過去の賢人は下記のような「おぼえ歌」を作っている。覚えておくと便利である。二例紹介しよう。
【おぼえ歌】
①「巳(み)」は上に、己(おのれ)己(つちのと)下につき、半ば開ければ已(すで)に已(や)む已(のみ)」
②「已(すで)に半ば、己(おのれ)は下に受けにけり、巳(み)はみなつけて、「イ」「キ」「シ」とぞ読む」
1.【画蛇添足】
★読み がだてんそく
★意味 余計なものをつけたすこと。
中国の楚の国の人が、蛇の絵を最初に描いた人が酒を飲めるという賭けをした。
一番最初に描き終えた人は余裕があったために調子に乗り、蛇に足を付け足した絵を描いた。
するとその絵は蛇ではないと言われて酒を奪われたという故事から。
★出典 『戦国策』戦国時代の遊説の士の言説・国策・献策などの逸話を国別に分類して編纂した書物。
前漢の劉向(紀元前77年~紀元前7年)の作といわれている。
★類似語 蛇足。為蛇画足(いだがそく)
2.【杯中蛇影】
★読み はいちゅうのだえい
★意味 疑う気持ちが強いと、つまらないことでも気になること。
酒杯の中に蛇の形をした影が映っているのを見て、蛇を飲み込んでしまったと思い込んで病気になり、その後、影は蛇ではなく弓のものであったと知ると、すぐに病気が治ったという故事から。
★出典 『秦書』「楽広伝」
★類似語 疑心暗鬼
3.【打草驚蛇】
★読み だそうきょうだ
★意味 無駄なことをして災難にあうこと
叢をたたいて、草の中に隠れている蛇を驚かすこと。
★出典 兵法36計
★類似語 藪蛇
【蛇の象形印】
【来年の干支 乙巳(いっし)】
佐藤 煒水