水明のお宝発掘シリーズ「水明会館図書紹介」その1
七十年以上の歴史を持つ水明書道会、さすがに宝物がたくさんあります。
そのお宝の中から、私のお気に入りをいくつかご紹介していきます。
まずは、先賢が寄贈された図書のうち、岳飛の「前出師表(ぜんすいしひょう)」という一冊の拓本を紹介したいと思います。
一般的に「出師」とは「師(軍隊)を動かす」ということ、「表」とは公開される上奏文のこと言いますが、ここでいう「出師表」は三国時代の名宰相「諸葛亮孔明(しょかつりょうこうめい)」の上奏文をいいます。
「出師表」は多くの人が書いていますが、やはり有名なものは南宋(1127~1279年)の忠臣の岳飛(がくひ・1103 − 1141)の書いたものでしょう。
この碑は四川省成都の武侯祠(ぶこうし〈葛孔明廟〉)にありますが、去年訪れた時には、状態が相当に悪くなっていました。
また、拓本も以前は土産物屋で売っていましたが、今はすっかり見なくなりました。まさに、レアものです。
水明にある岳飛(岳武穆)の「前出師表」は拓本はきわめて鮮明で、細い線まで見事に再現されています。
この文の中に「帝」という文字が十数個出てきますが、どの文字も同じ形はなく、古今の名筆と言われています。
めったに見られない逸品です。一度、手に取ってご覧になってみませんか。
ちなみに、私の持っている出師表も掲載します。違いがわかりますね。
岳飛の「前出師表」「後出師表」
「趙孟頫」の「出師表」
佐藤煒水