干支にまつわるエトせとら 丑編1
波乱の続く令和2年も、あと2か月となりました。
そこで、今年も11月から来年の1月にかけて、
「牛」に関した故事や四字熟語を紹介していきたいと思います。
来年の干支は「丑(うし)」
古代中国人にとって牛は神の霊気 を漂わせた動物です。
中国の神話には牛頭人身の神農や、軍神 蚩尤(しゆう)*1が登場しますが、それらは牛に対する崇拝の念のあらわれでしょう。
今年の干支であるネズミが、
農耕が主である私たち漢字文化圏の人間にとって大切な穀物を食い荒らす憎き動物であったのに対して、
「牛」は農耕を手助けする大事な動物といえるでしょう。
したがって、牛を含む四字熟語には、鼠のように負のイメージを含むものは少ないのです。
●「鶏口牛後」
①読み方
けいこうぎゅうご
②意味
大きな集団や組織の末端にいるより、小さくてもよいから長となって重んじられるほうがよいということ。
「寧(むし)ろ鶏口(けいこう)と為(な)るも、牛後と為る無かれ」の略。
「鶏口」は鶏の口(くちばし)。弱小なものの首長のたとえ。
③出典
史記蘇秦伝(しきそしんでん)
中国の戦国時代に、蘇秦(そしん)*2が韓(かん)王に
「小国とはいえ一国の王として権威を保つのがよく、強大国の秦に屈して臣下に成り下がってはならない」と説いて、韓(かん)・魏(ぎ)・趙(ちょう)・燕(えん)・斉(せい)・楚(そ)の六国が合従(がっしょう=連合)するのを勧めた故事による。
注
*1蚩尤(しゆう):中国神話に登場する神で、『路史』では、人間に農耕を教えたという「炎帝神農氏」の子孫とされている。古代ギリシャ神話のミノタウルスのように人の身体に牛の頭を持つといわれる
*2蘇秦(そしん): 中国、戦国時代の縦横家。洛陽の人。字は季子。鬼谷子に学び、遊説家として活躍。強国の秦(しん)に対抗して燕 ・趙 ・韓・魏・斉・楚 に合従策を説いて同盟させ、成功するが、同じ鬼谷子門下の張儀(ちょうぎ)の連衡策(れんこうさく=6国を個別に秦と同盟させようとした策)に敗れた斉で殺された。
佐藤煒水